「サイエンス考古学」

日経サイエンスに表記の連載がある。50年前、100年前、150年前のScientific American誌の記事を紹介するもので、けっこう面白い。

最近、界隈のみなさまから「○○考古学」「○○は考古学的アプローチ」というように考古学という語を自然科学系のターム、もしくは語にくっつける例を見聞きする。その流れで「サイエンス考古学」を目にし、ちょっとなあと思った次第です。

脳内の情報から議論を構築できるほど知識量が無いので、佐々木ら「初めての考古学」を引きます。

  • 文献史学と考古学は、歴史学を支える2本柱です
  • 考古学が研究素材とするのは、土器や石器といったモノ、専門用語で物質資料です。(中略)考古学では、物質資料から、その背景である文化に迫るのです。

ちなみに文献史学とは:

  • 文献史学では、その名のとおり、古文書など文字で書かれた資料を解読して、過去の社会はどうであったか議論します

「サイエンス考古学」は発行年度がきちんと分かっている文献を素材としている(引用している)ので、考古学といえる要素はなかなか見出し難いですね。研究に用いられた物質資料から何かを解き明かす積極的なコーナーならまさに当意即妙といったところですが、現状ではあまり含意はないのかなあと思ってしまいます。「サイエンス歴史学」なら全く問題はないでしょうが、ドライで面白みに欠ける気もしますね。「サイエンス温故知新」ならどうだろう?

「銀河考古学」という語もあります。
銀河の研究は形態等の地道な分類に端を発し、今でもその流れが続いています。「博物学」という表記はぴったりですね。とはいえ、近傍〜遠方へと「資料」の範囲を広げていくと、その分類は必然的に形状に加えて時間変化の軸を持つことになります。銀河の成長を支配する普遍的な原則を明らかにしたいという野望を込めてこう称すのは、むしろチャレンジングで面白いですね。

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もちろん、他分野の語をよく調べもせずに使う自然科学系の傲慢を糾弾するという方向に議論を持っていくことも可能だろうけど、労力がいるのでやめておく。

たいがい、他人のどうでもいいことが気になる時は暇な時である。小人閑居しどうでもいいことを気にす。