書評:戦艦大和―生還者たちの証言から (岩波新書)

戦艦大和―生還者たちの証言から (岩波新書)

戦艦大和―生還者たちの証言から (岩波新書)

一気に読む。わずかな(とは言え数百名の)生存者や家族、遺族への膨大なインタビューから丁寧に積み上げられている。世界最大・最強(大げさではなく)の戦艦に携わったことで否応なく課せられたものとの付き合い方は拾に多様。戦後を生きる我々のすべきは、まさに本書が挑戦しているように、ひとつひとつの声をつぶさに見、わがこととして考えてみることであろう。死者、生存者問わず、彼らの思いをあまりに単純化してきたのが戦後の我々なのではないだろうか。全員が靖国で会おうと思ったわけでもなく、単純に戦争を忌み嫌って来たわけでもない。ひとりの人間として、ひとりひとりの先人に向きあおうという努力を放棄してはいけない。改めて気付かされる一冊であった。史料価値も非常に高いだろう。素晴らしい一冊である。